この記事では加圧トレーニングのメカニズムと危険性を紹介しています。
雑誌やメディアで取り上げられる機会が増えてきた「加圧トレーニング」。筋トレ目的でもダイエット目的でも取り組む人が増えているので聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
しかしどういったトレーニングなのか、内容や具体的なメリットをまだ知らない人もまた多いと思います。
そこで、この記事では加圧トレーニングの概要、取り組むメリット、よく言われることが多い危険性は本当にあるのか?などについて今一度取り上げていきます。
この記事の目次
そもそも加圧トレーニングとは?
ではそもそも加圧トレーニングって何?という所から話を始めていきましょう。
端的に言えば加圧トレーニングは専用のベルトで腕や足を縛り、意図的に血流を制限することでトレーニングの効果を高めるメソッドのことを指します。
発明したのはボディビルダーであり、医学博士でもある佐藤義昭氏。
法事の際に正座をしていて足がしびれたことから「血流を悪くすればよりハードなトレーニングができるのでは?」と思いついたそうです。
加圧トレーニングのメカニズム
ただ、ベルトで手足を縛ると聞くと「何の効果があるのか?」と最初は疑問に思ってしまいますよね。
しかし血流の制限は筋肉の動きや脳の認識に大きな影響を与えます。
手や足を縛って血流が制限されると、酸素不足により通常の筋運動と比較してより多めの乳酸が発生します。血流が悪いためどんどん筋肉内に溜まっていってしまうんですよね。
するとホルモンの分泌などを司る「脳下垂体」が「ハードなトレーニングをしている!」と勘違いしてアナボリックホルモン(タンパク質の合成を促進したりするホルモンの総称)の一種である「成長ホルモン」を多く分泌させます。
この成長ホルモンは筋肉の成長に大きく寄与する物質です。
何しろ外部からの成長ホルモンの投与は多くのプロスポーツでドーピング規定違反になるくらいですからね。(加圧トレーニングは体の内部での出来事なのでもちろん問題なし)
したがって成長ホルモンの分泌量が増えると結果的にトレーニングの効率を上げることに繋がるのです。
筋肥大に関しては↓の記事もご参考下さい。
加圧トレーニングのメリット
加圧トレーニングのメリット①代謝の促進
上記のように加圧トレーニングは成長ホルモンの分泌を促進させます。
そしてこの成長ホルモンは筋肉に必要なタンパク質と共に三大栄養素に数えられる糖質、脂質の代謝も促進します。
糖質と脂質の代謝は食事をエネルギー源に変換する意味でも、またダイエットなど体重を減らす時にも非常に大事な要素になります。
筋トレ系だけでなく美容系のフィットネスジムでも加圧トレーニングを取り入れているジムが増えてきたのはこういった要素があるからなのです。
加圧トレーニングのメリット②遅筋と速筋を同時に鍛える
またよく知られているように人間の筋肉には有酸素運動など瞬間的な負荷の低い運動に使用される「遅筋」とウエイトトレーニングや短距離走など瞬間的な負荷の高い運動に使用される「速筋」に分かれています。
この2つの筋肉を同時に鍛えるのは通常ほとんど無理です。
というのも例えばウエイトトレーニングだと、遅筋を鍛えるには低重量高回数のメニュー、速筋を鍛えるには高重量低回数のメニューといったようにトレーニングの方向性が逆だからです。
しかし加圧トレーニングの場合、上記の通り血流を制限することで筋肉内の酸素が不足します。「有酸素運動」という名前にも含まれる通り、遅筋は酸素を多く必要とするため加圧した状態だと遅筋だけではパワーが足りなくなり、速筋が早い段階で動員されることとなるのです。
このため通常の筋トレでは別々のメニュー行う遅筋と速筋のトレーニングを同時に行うことができます。これは加圧トレーニングの大きな魅力ですよね。
有酸素運動については↓の記事もご参考下さい。
加圧トレーニングのメリット③比較的低負荷で行える
②のように加圧トレーニングは遅筋と速筋を両方使用することになるため、比較的負荷の低いトレーニングをしても効果が出やすいです。
何らかの事情で重いウエイトを扱うことができなかったり、関節の可動域が制限されていればトレーニングの効率は落ちてしまいますよね。
しかし加圧トレーニングであれば比較的軽いウエイトで、かつ可動域が多少狭くてもトレーニング効果を得やすいのです。「加圧トレーニングは苦労せずに鍛えることができる」という謳い文句を見た事がある人もいるではないでしょうか?(実際には苦労しないわけではない)。
そのため高齢者や重傷者のリハビリに使用する病院もかなり増えてきています。
ダンベルの重さに関しては↓の記事もご参考下さい。
加圧トレーニングのメリット④短時間で行える
通常トレーニングをする場合短くても30分、本格的にトレーニングするなら1時間~2時間ほど掛かりますよね。
毎日ジムに行く時間があるならまだしも忙しい人であればなかなかトレーニングの時間を取れない場合も多いと思います。
その点加圧トレーニングであれば負荷が低くてもある程度トレーニング効果が得られるのでトレーニングの時間があまり取れない人にもおすすめです。
最近は加圧トレーニングを取り扱っているジムもかなり増えてきたことですしね。
加圧トレーニングのメリット⑤血流改善
加圧トレーニングは上記の通り腕や足の付け根を縛って行うトレーニングです。
そのため該当部位の血流が制限されることなりますが、このとき脳が異常を感じてより多くの血液を筋肉内に送り込もうとします。
結果血管が拡張し、普段なかなか意識することが難しい細かい毛細血管まで血液が流れ込むため血流の改善に期待が持てます。
年齢を重ねるごとに血管は弾力性を失っていき、動脈硬化や高血圧を引き起こしやすくなるので血流が改善するということはとても大事ですね。
また血流は肩こりや首こりにも深く関わってきます。「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎにも当然影響します。
スマホ社会である現代。体の様々な「こり」に悩まされている人は多いと思うので高血圧と縁がなさそうな若い人もしっかり意識していかなければならないと言えるでしょう。
加圧トレーニングには反対意見もある?
このように加圧トレーニングは通常のトレーニングよりも効率よく体を鍛え、引き締めることができます。
しかし加圧トレーニングに対して危険性を指摘する声や反対する声が多いのもまた事実ではあります。
確かに加圧トレーニングはしっかりリスク管理をせずに行うと危険なトレーニングになってしまう可能性があるのです。
ここからは加圧トレーニングに潜むリスクや危険性、加圧してトレーニングを行う際の注意点などを紹介していきたいと思います。
加圧トレーニングの危険性と注意点
加圧トレーニングの危険性と注意点①血流制限を行うリスク
イメージはしやすいと思いますが、意図的に血流を制限しすぎると血液を送り出す心臓に負担が掛かってしまう場合があります。
また動脈硬化などにより血管内に形成される「血栓」が体の中にある場合、血栓が血流に乗って心臓や脳にたどり着き、心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまう可能性もあるのです。
適切な負荷の掛け方を知っているトレーナーの指導に従えばこういったリスクは軽減されますが、自己流で加圧トレーニングを行うとこれらのリスクが増す可能性が高いですね。
したがってもし過去に心筋梗塞や脳梗塞を発症したことがある人や高血圧の人、動脈硬化が進んでいる人など不安のある人は加圧トレーニングを行う前に十分な検査や医師への確認を行う必要があると言えるでしょう。
※メタボ体形の場合血圧が高いことがあります。メタボ体型の方は↓の記事もご参考下さい。
加圧トレーニングの危険性と注意点②人によっては体調に影響も
また加圧トレーニングは重量の負荷こそ上記の通り低めでも比較的高いトレーニング効果が得られます。
しかし手足の加圧に慣れていない人の場合、体調が悪くなってしまうケースも少なくありません。
特に加圧トレーニングの初回では貧血を起こしてしまうことがよくあります。
他にも血流を急激に制限したことにより吐き気や頭痛などを感じる人もいますね。
もしこれらの症状を感じたら即刻トレーニングを中止した方がいいでしょう。そして慣れるまでは激しいメニューは組まず、まずは加圧状態に慣れることを優先した方がいいと思います。
いずれにしても知識のあるトレーナーと一緒にトレーニングした方が安心ですね。
加圧トレーニングの危険性と注意点③体に赤い斑点が出る可能性
加圧トレーニングに慣れていないうちは血流制限の影響で毛細血管が破れて体に赤い斑点やあざができてしまう事があります。
この斑点は自然に治りますし加圧トレーニングに慣れてくればそのうち現れなくなりますが、見た目がいいとは言えないので人によっては注意しなければなりません。
加圧トレーニングの危険性と注意点④適切な負荷を掛けるのが難しい
この加圧トレーニングは専用のベルトを使用して手足を加圧しますが、このベルトの調節如何ではトレーニングの効率、そしてリスクが全く異なってきます。
ベルトの締め具合が緩すぎれば加圧トレーニングの意味がないですし、締めすぎれば上記リスクが高まってしまい危険です。トレーニング効果も低くなってしまいますね。
さらに丁度いいベルトの締め具合も一概に「これくらい」と言うことはできず、人によってかなり個人差があるのです。
そのため知識のない人が自分でベルトを適切な締め具合に調節することは非常に難しいと言えます。
自宅でもできるように加圧ベルト自体は市販されていますが・・・やはり加圧トレーニングを行うのであれば専門の医師もしくはトレーナーがいるジムや病院で指示を受けながら行うのがいいと思います。
自分で行うなら最低でも器具使用に関するセミナーだけでも受けたほうが安心してトレーニングできるでしょう。
加圧トレーニングの危険性と注意点⑤直接効果のある部位は限定的
また加圧ベルトは基本的に手と足の付け根にしか巻けません。最近人気を高めている加圧シャツとは名前は似ていますが別物です。
したがって腹筋や背筋の周囲に加圧ベルトを使用することはできないので、これらの部位に対する直接的な筋肥大効果はなく、加圧できる部位は限定的です。
しかしながら、上記したように加圧トレーニングを行うと成長ホルモンが多く分泌されやすくなります。分泌された成長ホルモン自体は全身を駆け巡るので代謝のアップや筋肉を肥大させやすくなります。
なので腕や足だけを加圧したとしても間接的には腹筋や背筋にも影響があると表現できるかもしれません。
腹筋と背筋の筋トレについては↓の記事もご参考下さい。
加圧トレーニングの危険性と注意点⑥費用が高い
危険性やリスクとはまた違いますが、加圧トレーニングを行っているジムは通常のジムより比較的ジム代が高い場合が多いです。
これは加圧トレーニングを指導するためには資格や専門の深い知識を持っている人材が必要なためです。専用器具の料金がけっこう高いというのも理由の一つですね。
そのため加圧トレーニングジムに通うならある程度の出費は覚悟しておいたほうがいいでしょう。
自宅よりお金は掛かりますが、ジムにはジムのメリットがあるので↓の記事もご参考下さい。
おすすめ加圧トレーニングメニュー
おすすめ加圧トレーニングメニュー①スクワット
【スクワットのやり方】
- 脚を肩幅程度に開く
- 背筋を伸ばし太ももと床が平行になるくらいまで腰を落とす
- 太ももの力で伸びあがる
- 2~3を繰り返す
加圧トレーニングといっても専用のベルトを巻く以外は特に通常のトレーニングと変わりませんが、初めて筋トレをする人もいると思うのでいくつかメニューを紹介していきたいと思います。
スクワットは単純な運動に見えて、大腿四頭筋やハムストリング、脊柱起立筋など日常生活においてたくさん使う筋肉を鍛えることができます。
通常負荷を加える場合は重めのダンベルやバーベルを使いますが、加圧トレーニングは上記の通り軽い負荷でもある程度の効果が望めます。
というか加圧した上で重い負荷を使ってトレーニングすると危険なので普段使っている重量の10%~30%くらいの重量で行うようにしましょう。自重でも構いません。
スクワットに関しては↓の記事もご参考下さい。
おすすめ加圧トレーニングメニュー②ショルダープレス
【ショルダープレスのやり方】
- 椅子やベンチに座る
- ダンベルを耳の横辺りに持ってくる
- そのまままっすぐダンベルを上げる
- ゆっくりダンベルを下ろす
- 3~4を繰り返す
肩を丸く仕上げたいならショルダープレスはおすすめのメニューです。
肩のトレーニングに共通する事ですが、コツは「肩をすくめないこと」ですね。
肩をすくめてしまうと肩よりも僧帽筋に刺激が流れてしまいがちなので注意しましょう。
こちらもスクワットと同じく加圧してやるなら重量はかなり落とし、12回×3セットほど行いましょう。
ショルダープレスに関しては↓の記事もご参考下さい。
おすすめ加圧トレーニングメニュー③クランチ
【クランチのやり方】
- 膝を90度に曲げて仰向けになる
- 両手を耳の辺りにつける
- 背中を丸めるように上体を起こす
- 肩甲骨が床に触れる寸前までゆっくり上体を戻す
- 3~4を繰り返す
上記の通り腹筋部には加圧ベルトを巻くことができないので直接的な筋肥大効果は薄いです。
しかし加圧状態だと成長ホルモンの分泌が増えていますのでついでに腹筋メニューをやっておくというのは十分にありな選択肢ですね。
手軽に行うならクランチがいいでしょう。
床に寝て上体を起こすだけのトレーニングになりますが、背中を丸める意識で15×3セット行うと腹筋に強い刺激がいきます。
クランチに関しては↓の記事もご参考下さい。
おすすめ加圧トレーニングメニュー④アームカール
【アームカールのやり方】
- 手にウエイトを持つ
- ダランと両腕を下げた状態から少しだけウエイトを上げてスタートポジション
- 肘を曲げながらウエイトを上げる
- ゆっくりウエイトをスタートポジションまで下げていく
- 3~4を繰り返す
アームカールはおそらく最も加圧トレーニングの効果を実感できるメニューではないでしょうか。
通常はダンベルかバーベルを持って行いますが、加圧状態で行えば何も持っていなくてもかなり腕の疲労感を感じることができます。
そのため初めての加圧トレーニングではこちらのアームカールをやってみるのもいいでしょう。
ただし腕を上げる時は力こぶ(上腕二頭筋)を収縮させる意識を持ち、腕の力だけで動作を行うようにしましょう。
アームカールに関しては↓の記事もご参考下さい。
おすすめ加圧トレーニングメニュー⑤レッグカール
【チューブレッグカールのやり方】
- エクササイズチューブ(バンド)で輪を作る
- うつ伏せに寝る
- 鍛えたい方の足のかかと(もしくは足首)に、逆の足のつま先にチューブを引っかける
- 太ももを上に向かってゆっくり上げる
- ゆっくり元に戻す
加圧トレーニングで太ももの裏側、ハムストリングを鍛えたい場合はレッグカールがおすすめです。
マシンでは負荷が強すぎると感じた場合はトレーニングチューブやエクササイズバンドを使用するといいでしょう。
勢いを利用するというよりもゆっくり負荷を持続的に掛けていくのがコツです。
レッグカールについては↓の記事もご参考下さい。
加圧トレーニングにおすすめのグッズ
加圧トレーニングにおすすめのグッズ①血圧計
上記の通り加圧トレーニングは血圧の状態によってリスクになることもあります。
そこで、もし加圧トレーニングに関心がありやってみようかなと悩んでいる人はまず血圧計を使用して自分の血圧を計ってみましょう。
もちろん病院には常備されていますし、ジムにもある所にはありますが、今後の健康管理という意味でも一つ自宅に持っておくことをおすすめします。
シンプルなものであれば値段もそこまで高くありません。
加圧トレーニングにおすすめのグッズ②プロテイン
加圧トレーニングを行って筋肉を大きくする、または体を引き締める場合はトレーニング内容だけでなく食事及び栄養摂取にも気を配らなければなりません。
筋肉の成長と維持には糖質、脂質、タンパク質といった三大栄養素全てをバランスよく摂取する必要がありますが、最も重要なのがタンパク質です。
しかし1日のタンパク質摂取量(最低でも体重と同じか体重×1.2倍くらいは摂りたい)を食事から摂るとなると毎日魚や鶏肉などの高タンパク食品を食べなければならず、経済的にけっこう大変です。
そこでプロテインなら20g~30gくらいのタンパク質を手軽に摂取できるので非常におすすめですね。
加圧トレーニングにおすすめのグッズ③トレーニングウェア
加圧トレーニングに使用する加圧ベルトは締め付ける力が強いため素肌に装着すると摩擦でかぶれてしまいます。
そのため加圧トレーニングを行う際はランニングのような袖の無いシャツではなく、袖のついたシャツを着用する必要があります。
袖があれば何でもいいのですが、おすすめはコンプレッションウェアと呼ばれるシャツですね。
コンプレッションウェアは伸縮性のある生地で作られており、通常のシャツと比較して若干締め付け感を感じるサイズに仕上げられているシャツのことで、運動の際に姿勢の保持をサポートしてくれたり疲労を軽減してくれたりします。
よくスポーツ選手がインナーとしてユニフォームの下に着用していますよね。
とても動きやすくなるのでトレーニングの際にはおすすめです。
ウェアに関しては↓の記事もご参考下さい。
まとめ
このように加圧トレーニングは通常のトレーニングより低負荷でも効果を挙げられるトレーニングメソッドになります。
しかし血流を制限するという特殊な方法で行うメソッドのため、持っている持病やそのときの体調次第ではリスクが出てくる場合もあるので注意しなければならない点も多いです。
もし加圧トレーニングに興味があるのであれば、自分の体調と相談しまずは加圧トレーニングの動画を見たり近くのジムで見学をさせてもらうといいでしょう。
ilohas834
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