背中全体を鍛える効果的な種目が「ベントオーバーロウイング」です。
これはデッドリフトに次いで、背中の厚みと広がりを手に入れるには最適のトレーニング種目。
かつて、圧倒的な背中の大きさでミスターオリンピア6連覇を成し遂げた「ドリアンイエーツ」も、このベントオーバーロウイングを好んで取り入れていました。
そのため「ドリアン・ロウイング」と呼ばれる種目も、このベントオーバーロウイングが原型です。
今回は、ベントオーバーロウイングのやり方と重量設定・フォーム・効果的に効かせるためのコツやテクニックについて解説します!
この記事の目次
ベントオーバーロウイングの概要
ベントオーバーロウイングは、背中全体の筋肉を鍛えることのできるトレーニング種目。
広背筋・広背筋・僧帽筋・大円筋・脊柱起立筋・三角筋後部など、背中全体を構成する筋肉群全体を同時に鍛えられます。
ベントオーバーロウイングは、関与する筋肉群が非常に多い種目です。
そのためトレーニング効果は非常に大きく、ボディメイク的観点・スポーツ競技者のパフォーマンス向上においてもおすすめ。
動作の中で複数の関節動作を含むため、多関節運動種目(コンパウンド種目)に分類されます。
ベントオーバーロウイングで鍛えることのできる部位
まずはこのトレーニングでどこが鍛えられるのか、確実にしておきましょう。
ベントオーバーロウイングで鍛えられる部位①僧帽筋(首から肩にかけての筋肉)
僧帽筋は首から肩にかけての筋肉。
前・後から見たときに背中の大きさを表現できる部位です。
この僧帽筋を鍛えることで、なで肩やいかり肩の解消に効果があります。
ちなみに、僧帽筋を鍛えることで逆三角形よりも美しいとされている“ひし形”の背中を手に入れられますよ。
Tシャツを着こなすうえでも欠かすことのできない筋肉ですね。
ベントオーバーロウイングで鍛えられる部位②広背筋(羽と呼ばれる筋肉)
広背筋は逆三角形の背中を作る上で一番重要な部位です。
腰の上あたりから肩の下あたりまである広背筋は、横への広がりが大きければ大きいほどウェストとの対比で逆三角形のシルエットできるのですね。
背中の筋肉の王道部位と言えるでしょう。
広背筋は本来、体幹の中の一つの筋肉に属しますが、大円筋と共に、肩関節のさまざまな動作(内転、内旋、伸展)に関わり重要な役割を果たしています。
懸垂、ロープ・クライミング・綱引きのように、腕を伸ばした状態から身体を引き上げるという動きでは、広背筋が重要です。
ベントオーバーロウイングで鍛えられる部位③大円筋
大円筋は、脇の下の背面部に位置する筋肉です。
働きは広背筋と同様に、肩関節の内転、内旋、伸展動作。
大円筋は広背筋と共同で作用することが多い筋肉であるため、”広背筋のヘルパー”とも呼ばれることがあります。
ベントオーバーロウイングで鍛えられる部位④三角筋後部
三角筋後部は、三角筋の中でも後方部分を占めている筋肉です。
主な働きは下記の3つ。
- 肩の伸展(腕を後ろに引く動作)
- 肩の水平外転(水平に上げた腕を外側に絞る動作)
- 肩の外旋(肩後部にあるインナーマッスル)
ベントオーバーロウイングで鍛えられる部位⑤菱形筋
菱形筋は小さい筋肉で、背中にある広背筋や僧帽筋などの深層に位置するインナーマッスル。
菱形筋群はその上部にある小菱形筋と下部にある大菱形筋の二つで構成され、僧帽筋に被さるように覆う菱形の筋です。
大きさなどに違いはありますが、形状も働きもほぼ同じ。
主に肩甲骨を内転(引き寄せる働き)に作用し、また、肩甲挙筋、小胸筋と協同して肩甲骨を下方回旋させる働きがあります。
また、小菱形筋は肩甲挙筋とともに肩甲骨の拳上にも関わります。
小菱形筋や大菱形筋の筋力が弱くなってくると、猫背のように背中が丸くなってしまいますよ。
ベントオーバーロウイングで鍛えられる部位⑥脊柱起立背筋(背中の中央にある筋肉)
脊柱起立筋は腰から背骨に沿って首の下あたりまで縦に伸びている長い筋肉です。
下半身と上半身をつなぐこの筋肉は、姿勢の維持や体幹の安定など四肢を自由自在に動かすといった非常に大きな働きがあります。
さまざまなスポーツのパフォーマンス向上にも効果があるため、鍛えることで得られる効果が高い筋肉です。
脊柱起立筋は複合筋で、棘筋・最長筋・腸助筋の3つの部位をまとめて脊柱起立筋と呼ばれています。
身体を横から見たときの背中の厚みが欲しければ、脊柱起立筋を鍛えましょう。
ベントオーバーロウイングのやり方・フォーム
【ベントオーバーロウイングのやり方・フォーム】
- バーベルにウェイトをセットし、バーベルの前に立つ
- 両脚の足幅は、肩幅と同じ程度に開いておく
- 腰を落とし、バーベルを両手で握る
- 手幅は肩幅より少し広め
- 順手
- 中腰の姿勢で胸を張り、背筋を伸ばしてバーベルを持つ
- 膝を軽く曲げた状態で維持
- 膝からくるぶしが床に対し、垂直であることを意識する
- 顔はまっすぐ前を向く
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態にする
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてバーベルを引き上げていく
- おへそのあたりにバーベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- バーベルを挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げたバーベルを元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
ベントオーバーローイングの目安は8~15回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
ベントオーバーロウイングの効果的な6つのバリエーション
ベントオーバーロウイングにはいくつかのバリエーションが存在します。
それぞれの特徴を理解し、より効果的なトレーニングにしていきましょう。
バリエーション①ダンベルロウイング
ダンベルロウイングは、バーベルではなくダンベルを使用して行うバリエーションの一つです。
特徴は、ダンベルを使うことでより肩関節伸展を深く大きく行えること。
より筋肥大に効果的な刺激を与えることができます。
【ダンベルロウイングのやり方・フォーム】
- ダンベルを2つ用意し、足元に置いておく
- 両脚の足幅は、肩幅と同じ程度に開く
- 腰を落とし、ダンベルを両手で持つ
- 順手
- 中腰の姿勢で胸を張り、背筋を伸ばす
- 膝を軽く曲げた状態で維持
- 膝からくるぶしが床に対し、垂直であることを意識する
- 顔はまっすぐ前を向く
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態にする
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてダンベルを引き上げていく
- おへそのあたりにダンベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- ダンベルを挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げたダンベルを元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
ダンベルロウイングの目安は8~15回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
- しっかりと背中を収縮しきるところまでダンベルを引き上げるようにしましょう。
ダンベルロウイング・オン・ベンチ
インクラインに調整したベンチにうつ伏せで寝ることで前傾姿勢を作り、ロウイング動作をするバリエーションの一つです。
基本姿勢を作るのが難しい方や、初心者の方におすすめなトレーニング種目です。
【ダンベルローイング・オン・ベンチのやり方・フォーム】
- トレーニングベンチを30~45度程度に、インクラインの角度に設定する
- ベンチにうつ伏せの姿勢で寝て、ダンベル2つを両手で握る
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてダンベルを引き上げていく
- おへそのあたりにダンベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- ダンベルを挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げたダンベルを元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
ダンベルロウイング・オン・ベンチの目安は8~15回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
ドリアンイエーツ式ベントオーバーロウイング「ドリアン・ロウ」(逆手ベントオーバーロウイング)
「ドリアンロウ」または「イエーツロウ」と呼ばれるドリアンイエーツ式のベントオーバーロウイングです。
リバースグリップ(逆手)でバーベルを握り、あまり上体を傾けずに行います。
通常のベントオーバーロウイングとの主な効果の違いは「腰への負担が少ない」「より上背部に効く」ということ。
僧帽筋や、三角筋後部に効きやすいフォームです。
【ドリアンロウのやり方・フォーム】
- バーベルにウェイトをセットし、バーベルの前に立つ
- 両脚の足幅は、肩幅と同じ程度
- 腰を落とし、バーベルをリバースグリップ(逆手)で握る
- 手幅は肩幅より少し広めに握る
- 上半身を少し前傾させるの姿勢で胸を張り、背筋を伸ばしてバーベルを持つ
- 膝を軽く曲げた状態で維持
- 膝からくるぶしが床に対し、垂直であることを意識する
- 顔はまっすぐ前を向く
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてバーベルを引き上げていく
- おへそのあたりにバーベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- バーベルを挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げたバーベルを元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
ドリアンロウの目安は8~15回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
スミスマシン・ロウイング
スミスマシン・ロウイングはバーベルの軌道が固定されているため、前後左右にフォームのブレなく安定したトレーニングが可能です。
また、バーベルの軌道が固定されるため安定した動きが可能になり、結果的に純粋に広背筋のみ鍛えられるというメリットもあります。
【スミスマシン・ロウイングのやり方・フォーム】
- スミスマシンにウェイトをセットし、バーの前に立つ
- 両脚の足幅は、肩幅と同じ程度
- 腰を落とし、バーベルを両手で握る
- 手幅は肩幅より少し広め
- 順手
- 中腰の姿勢で、バーを引き上げたときにおへそのあたりにくるような位置であることを確認する
- 胸を張り、背筋を伸ばしてバーベルを持つ
- 膝を軽く曲げた状態で維持
- 膝からくるぶしが床に対し、垂直であることを意識する
- 顔はまっすぐ前を向く
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態にする
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてバーを引き上げていく
- おへそのあたりにバーベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- バーベルを挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げたバーベルを元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
スミスマシン・ロウイングの目安は8~15回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
Tバー・ロウイング
Tバー・ロウイングは、バーベルの片側にのみウェイトをつけて上体を前傾させた状態でVグリップを握り、腕を後方へ引いて行うバリエーションです。
通常のベントオーバーロウイングとの効果の違いは、下記3点です。
- ウェイトの軌道が弧を描く軌道になる
- 背中の対象筋に対し、負荷の加わる角度が異なる
- 広背筋下部への負荷がより高まる
- グリップを握る手幅が狭い
- 背中の中央に位置する僧帽筋に対し、効率的に効かせられる
- 通常のベントオーバーロウイングと比べて、深い前傾姿勢を作る必要がない
- ウェイトが弧を描くような軌道のため、ベントオーバーロウイングほど上体を前傾しなくても効果的に効かせられる
- 腰への負担が軽減
- より高重量を扱える
【Tバーロウイングのやり方・フォーム】
- バーベルの片側にのみウェイトをセットし、専用器具のランドマインもしくは部屋の片隅にもう片側を固定する
- バーベルにまたがるようにして立つ
- 両脚の足幅は、肩幅と同じ程度
- 腰を落とし、Vバーを両手で握る
- 中腰の姿勢で胸を張り、背筋を伸ばしてバーベルを持つ
- 膝を軽く曲げた状態で維持
- 膝からくるぶしが床に対し、垂直であることを意識
- 顔はまっすぐ前を向く
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてバーベルを引き上げていく
- おへそのあたりにバーベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- バーベルを挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げたバーベルを元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
Tバーロウイングの目安は8~15回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
チューブ・ロウイング
トレーニング用のチューブを足で踏んで固定し、肩甲骨を寄せるようにして背中の筋肉で引っ張ります。
ウェイトを使用しないため、負荷は小さいですが、自宅で手軽に取り組めるというのがメリットです。
チューブを短く持てばより負荷が高まり、長めに持てば負荷が軽減します。
自分にあった強度で効果的なトレーニングを行いましょう。
【チューブ・ロウイングのやり方・フォーム】
- トレーニングチューブの両端を、両手で握る
- チューブを両脚で踏む
- 両脚の足幅は、肩幅と同じ程度に開いておく
- 腰を落とし、上体を前傾させる
- 膝を軽く曲げた状態で維持
- 膝からくるぶしが床に対し、垂直であることを意識
- 顔はまっすぐ前を向く
- 両腕は床に対し、垂直に伸びている状態
- これがスタートポジション
- 肩甲骨を寄せるようにしてトレーニングチューブを引き上げていく
- おへそのあたりにバーベルを引き上げるイメージ
- 肘は胴体から離れないように閉じて動く
- 肘を挙げ切ったところで、背中全体を収縮させる
- 引き上げた肘を元の位置までおろしていく
- 上記の動作を繰り返す
チューブ・ロウイングの目安は15~20回×3セット。
フォームと姿勢の維持が少々難しいため、まずは適切なフォームを体で覚えるまで練習しましょう。
効果的に効かせるコツ
- 常に胸は大きく張ったまま動くようにしましょう。
- 背中を丸めないよう、背筋を伸ばしたまま動くことを意識しましょう。
- 大きな可動域で動くことで、対象筋に効果的な負荷を与えられます。
【関連記事】チューブロウイングについてさらに詳しく解説しています♪
ベントオーバーロウイングでしっかり効かせる重量設定・回数・セット数について
ベントオーバーロウイングでしっかり効かせるためには適切な重量設定・回数・セット数が非常に重要です。
このうちどれか一つでも間違ったやり方だと効果が半減してしまい、結果が期待できません。
ここで確認して、最大限の効果を得られるベントオーバーロウイングを行っていきましょう。
高重量低回数でしっかりと背中に負荷を与える!
ベントオーバーロウイングは前述したとおり、使用する筋肉群が多い種目です。
そのためそれだけ出力が大きくなり、使用重量は必然的に重くなります。
つまり、使用する筋肉群が多い種目を軽い重量でトレーニングをすると、十分な負荷を対象筋に与えられない可能性があります。
高重量低回数で追い込むことが大切です。
回数の違いによる効果について
- 筋出力向上 1~5回
MAX重量を伸ばしたい場合は、筋出力が向上するメニュー組みがオススメです。1-5回/1setが限界の重量を扱うようにしましょう。
- 筋量向上 6~10回
筋肉を大きくしたい(筋肥大)を目的とする場合は、筋肉量が向上するメニューを。6-10回/1setが限界の重量を扱うようにしましょう。
- 筋持久力向上 12~15回
筋持久力アップを目的とする場合は、12-15回/1setが限界の重量を扱うようにしましょう。
大胸筋の筋肥大に効果的なセット数について
一般的には最低でも“3セット”と聞いたことがあるかもしれませんが、実際のところ、これでは筋肥大は見込めません。
3セットのみでは十分な負荷を与えられず、に効果が表れにくいのです。
最低でも5セット以上10セット以下
おすすめするのは最低でも5セット以上。
筋肥大に効果的な負荷を与えるには筋肉の緊張時間を長くし、かつしっかり重量をかけてオールアウト(追い込み切る)することが重要です。
また、筋出力向上の観点からしても5セット以上でないとすべての筋繊維が使用されず、使用重量もあまり発揮されません。
つまり3セットではウォーミングアップレベルでしかないということです。
パワーリフティングのトレーニングでは、基本的に8セット・10セット行います。
それくらいのセット数で追い込まなければ目に見える効果はなかなか表れてくれません。
しっかりとオールアウトさせることを意識してくださいね。
ベントオーバーロウイングでより効かせるトレーニングセット・テクニック
では、ベントオーバーロウイングでより効かせるセット・テクニックについて紹介します。
より効果的で質の良いトレーニングができるように確認していきましょう。
MI40法・ベントオーバーロウイング
アメリカのIFBBプロボディビルダーである「Ben Pakulski」が提唱した上級者向けトレーニング法です。
ポジティブ(力を入れて挙上する) 動作を1秒
ネガティブ(力を抑制してバーベルをおろす) 動作を4秒
1レップに計5秒かけてしっかりと負荷をたたき込むやり方です。
これを最低でも8レップ行います。
8レップで「限界」の重量設定が重要になりますので、軽くしすぎないよう注意してください。
ネガティブ動作重視の高負荷トレーニングテクニックと言えるでしょう。
【やり方】
- 通常のベントオーバーロウイング動作時に、トップポジションまで上げるスピードを1秒で動く
- ボトムポジションまでダンベルをおろす際に4秒かけながらゆっくりとおろす
- このとき体幹は肘がブレやすくなるため、しっかり腹筋に力を入れる
3段階・ドロップセット
ドロップセットとは高負荷のトレーニングでこれ以上挙上できない限界まで筋肉を追い込んだ後、インターバルをとらず、即座に少しだけ負荷を下げて再び限界まで筋肉を追い込むトレーニング法です。
例えばベントオーバーロウイングだと下記のようになります。
- 60kg 10回
- 45kg 10回
- 30kg 10回
計30回休憩なしでそれぞれの重量で限界まで追い込みます。
とにかく“筋肉に休憩する瞬間を与えない”ことがより効果を高めるポイントです。
「筋肉が限界に達する強度のトレーニングを長い時間続けることによって強い負荷を筋肉に与え、筋肉を大きく増強させる」という上級者向けのトレーニング法ですよ。
ピラミッドセット
ピラミッドセット法は、最大筋出力の向上・筋肥大の双方をより狙えるテクニックで、主にBIG3などの全身を鍛えるコンパウンド種目(多関節運動種目)で用いられます。
セット毎に回数と使用重量を変えることで、効果的に対象筋を鍛えていきます。
セット毎に重量を増やして回数を減らす方法を「アセンディングピラミッド」、セット毎に重量を減らして回数を減らす方法を「ディセンディングピラミッド」と呼びます。
他にもセットの組み合わせ方によって「ダブルピラミッド」や「フラットピラミッド」などさまざまな呼び方がありますが、今回は代表的なピラミッド方について紹介しますね。
アセンディング・ピラミッドセット
セット毎に重量を増やして回数を減らす方法です。
筋肥大と筋力向上の両方を狙えます。
- 軽い重量から初めて徐々にウエイトを上げていく
- 最後にメインセットで筋力向上を狙う
セット | 負荷%1RM(1回が限界の重量) | 回数 |
1 | 60%(20RM) | 15回 |
2 | 70%(12RM) | 10回 |
3 | 80%(8RM) | 8回 |
4 | 85%(6RM) | 6回 |
5 | 90%(4RM) | 4回 |
ポイントは以下の通りです。
- 1セット目・2セット目は軽めの重量で回数を兼ねつつ、ボリュームを多めにする
- 3セット目からは筋肥大に効果的な重量設定・回数でボリュームを稼ぐ
- 4セット目は筋肥大・筋力向上の両効果を狙う
- 5セット目はメインセットで、最大出力の向上を狙う
軽めの重量と重めの重量どちらも扱うため、筋肥大と筋出力向上の両効果に期待ができる高強度トレーニングテクニックです。
ただし、重めの重量セットを行う前にすでに筋疲労しているため、筋出力の効果はやや小さくなります。
また、セット数の割にはボリュームが少ないため筋肥大の効果もそこそこと言った感覚のトレーニングです。
普段のトレーニングとは異なった刺激を与えるという意味では効果的であることに間違いはありません。
是非とも実践していただきたいテクニックです。
ディセンディング・ピラミッド
セット毎に、使用重量を減らして回数も減らしていく方法です。
「リバースピラミッド法」とも呼ばれる、最大筋出力向上を目的としたトレーニングテクニックです。
- ウォーミングアップを行ってから段階的に負荷を上げ、1RMの80%程度の重量まで扱う
- 最も重い重量でメインセットを限界まで行う
- ウェイトを少し下げて再び限界まで行う
- さらにウェイトを下げて限界まで行う
セット | 負荷%1RM(1回が限界の重量) | 回数 |
1 | 90%(4RM) | 4回 |
2 | 80%(8RM) | 8回 |
3 | 70%(10RM) | 10回 |
ポイントは以下の通りです。
- 1セット目がメインセットで、最大筋出力向上を狙う
- 2セット目は筋肥大/筋力向上の両効果を狙う
- 3セット目は筋肥大狙いでボリュームを稼ぐ
1セット目から最高重量を扱うので、最大筋出力向上に非常に効果的な方法です。
また、2セット目以降でもある一定のトレーニングボリュームも稼げるので、ある程度の筋肥大効果も期待できますよ。
ダブル・ピラミッド
アセンディングピラミッドの後にディセンディングピラミッドを続けて行う高強度ピラミッドセット法です。
高回数→低回数→高回数という回数の流れでセットを組みます。
筋肥大の効果を最大化できる、非常に優秀なトレーニングテクニックです。
- ウォームアップを行って段階的に負荷を上げ、1RMの80%程度の重量まで扱う
- 最も重い重量でメインセットを限界まで行う
- ウェイトを少し下げて再び限界まで行う
- さらにウェイトを下げて限界まで行う
セット | 負荷%1RM(1回が限界の重量) | 回数 |
1 | 60%(20RM) | 15回 |
2 | 70%(12RM) | 10回 |
3 | 80%(8RM) | 8回 |
4 | 85%(6RM) | 6回 |
5 | 90%(4RM) | 4回 |
6 | 85%(6RM) | 6回 |
7 | 75%(10RM) | 10回 |
ダブルピラミッド法では、筋肥大・筋出力向上の効果を最大化したトレーニングテクニックです。
かなりの高強度トレーニングですが、筋肥大の効果が非常に高い方法です。
フラット・ピラミッド
アセンディングピラミッド法で使用重量を徐々に上げていき、メインセットを続けて数セット行うトレーニングテクニックです。
- 軽い重量から初めて徐々に使用重量を上げていく
- 最後に最も重い重量設定で数セット連続で行う
セット | 負荷%1RM(1回が限界の重量) | 回数 |
1 | 60%(20RM) | 15回 |
2 | 70%(12RM) | 8回 |
3 | 80%(8RM) | 5回 |
4 | 90%(4RM) | 4回 |
5 | 90%(4RM) | 4回 |
6 | 90%(4RM) | 4回 |
ポイントは以下の通りです。
- 1セット目・2セット目はウォームアップセット
- 3セット目はメインセットである4セット目に入るための重量に慣れるためのメモリーセット
- 4セット目以降からメインセットで最大筋出力の向上を狙う
メインセットでは高重量を連続して扱うため、最大筋出力向上の効果が非常に高いトレーニング法です。
一方で、このセット数では全体のボリュームは少なくなってしまうため、筋肥大の効果を大きくするにはセット数を増やすなどしてトレーニング強度を高めていきましょう。
ベントオーバーロウイングの効果を高めるポイント
筋トレ効果を高めるポイント、ベントオーバーロウイング版をみていきましょう。
背中は真っすぐに(ニュートラルスパイン)する
ベントオーバーロウイングをするうえで非常に重要なことは背中の角度。
ここではニュートラルスパインが重要です。
ニュートラルスパインは“正しい体のライン・正しい骨の位置”のことを指します。
普通に真っすぐに立った状態ですね。
背中が丸まっていたり反りすぎている状態でトレーニングをすると大きな怪我につながる危険性があるため、背中は“真っすぐ”の状態で動きましょう。
マッスルコントロールを意識する
マッスルコントロールとは、筋肉の出力によりウェイトを扱い制御するという意味です。
すべての種目に共通することですが、ウェイトの数字通りの負荷を筋肉に与えなければ、そのウェイトを扱っている意味がありません。
たとえばダンベルメニューでは、ダンベルを下すさいに力を抜いて勢いよくおろすとウエイトが意味をなさなくなるのです。
20kgのダンベルでもおろす瞬間に力を抜くと、実際に筋肉に負荷として乗っているウェイトの重量は5kgやゼロになっている可能性があります。
これでは非常に効率の悪いトレーニングになりますよね。
おろすさいも力を抜かず、筋肉にウェイトの数字通りの負荷を乗せたままおろす意識を持ちましょう。
これがマッスルコントロールです。
マッスルマインドコネクション
マッスルマインドコネクションとは、「筋肉と脳神経のつながり」のことを指します。
なかやまきんに君の筋肉ルーレットのように、大胸筋をピクッピクッと動かすのを想像するとわかりやすいでしょう。
彼は筋肉を自由自在に操ることが出来るからこそ、あの芸ができるのですね。
筋肉を自在に操ることが出来るということは、筋トレでメインターゲットを効率的に効かせられるということ。
そして“負荷を感じる”こともこのマッスルマインドコネクションでは重要です。
トレーニング中にメインターゲットの部位に対し、負荷を感じながら動作させることで、効かせるべき部位だけに効かせることができます。
ウェイトをおろすときはゆっくりとおろす(ネガティブ動作)
筋肉への負荷が入る瞬間というのは以下の2つに分けられます。
- ポジティブ動作、力を入れてウェイトを挙げていくコンセントリック動作時
- ネガティブ動作、力を抑えてウェイトをおろしていくエキセントリック動作時
エキセントリック動作はコンセントリック動作に比べると、なんと“1.7倍の高重量”を扱えます。
そのためより強い刺激を筋肉に与えることが可能なのです。
エキセントリック動作で負荷をしっかり入れるためには、3秒~5秒程度長い緊張時間で刺激するのが理想的。
筋肉は筋繊維に傷がつくことで、修復段階で筋肉がより増強されます。
つまり、エキセントリック動作をゆっくり行うことでより筋肥大に適した負荷を与えられるということです。
トレーニングマシンのように同じ動作を意識する
トレーニングマシン種目のように、毎回の動作を同じようにきれい適切なフォームを維持しながら動作しましょう。
正しいフォームをしっかりと身につけ、体で覚えることが最も効率的に対象筋への負荷を与えられる道です。
理想の肉体を作り上げる近道ですね。
間違ったフォームのままトレーニングを続けると対象筋以外の筋肉も使ってしまい、適切な負荷が入りません。
結局いつまでたっても肉体に変化のない、質の低いトレーニングになってしまうので気を付けましょう。
体の反動を使わない
体の反動というのは、膝の曲げてから伸ばす伸展動作や、腰を大きく反るようにして行う腰伸展動作をすることで生まれる反動の力を使ってウエイトを上げてしまうこと。
この反動(チーティング動作)をすると、メインターゲットである三角筋の力だけでなく背中や脚の力も加わってしまいます。
せっかくの三角筋への負荷が分散してしまうのですね。
チーティング動作を行わなければダンベルが上がらないのは、重すぎることが原因で、無理がたたって肩を痛めてしまう可能性もあります。
そのため、体幹伸展動作をしなくても挙げられる重量を選択することが大切です。
これを“マッスルコントロール”といいます。
マッスルコントロールとは“筋肉の力でウェイトを扱う”という意味。
オーバーウェイトによりウェイトに筋肉が扱われてしまうと効果は期待できません。
ウェイトは、筋肉がコントロールして扱うことで意味のある存在になるのです。
全ての筋トレはこのマッスルコントロールから始まります。
“チーティング”と“ストリクト”の概念を理解し、より効果の高い筋トレへ
筋トレには「チーティングフォーム」と「ストリクトフォーム」という概念が存在します。
ストリクトフォームとは“正しい”“正確な”“厳格な”という意味がある言葉。
つまり、反動を使わず丁寧で正しいフォームという意味になります。
反対にチーティングフォームには“反則”という意味があり、体の反動を使ってメインターゲット以外の筋肉で行うため、自分で自分を補助できるフォームという意味です。
この2つの概念がトレーニングでは非常に効果的な役割を果たしてくれます。
チーティングというのはあくまで、“ストリクトフォームで挙がらなくなってから最後に追い込むために対象筋以外の筋肉を少しだけ使い、ぎりぎり対象筋の力のみで挙げられる程度の力で補助をするフォーム”なので、ただ闇雲に体の反動を使って動作するのとではまったたく意味が異なるわけですね。
フォームが安定しない場合はスミスマシンを使用する
フリーウェイトを使ったベントオーバーロウイングでは適切なフォームが難しい場合、そのまま続けると怪我や非効率なトレーニングになる恐れがあります。
そのため、その場合にはスミスマシンを使用してみましょう。
スミスマシンはバーベルやダンベルといったフリーウェイトとは異なり、バーベルの軌道が固定されているため、前後左右にフォームのブレなく安定したトレーニングが可能です。
またセーフティバーがついているので、万が一潰れてしまってもセーフティバーより下には落ちず、安全性の高いトレーニングができます。
そのため、フォームがまだ安定していない初心者の方にもおすすめします。
ベントオーバーロウイングを行う前・後のストレッチについて
ベントオーバーロウイングは前述した通りに腰や背中への負荷が大きいため、必ず入念なストレッチをしてから取り組みましょう。
背中や腰のストレッチをすることで柔軟性が向上し、出力向上や可動域も広がります。
結果的に全体的なパフォーマンス向上につながり、体が温まることで血流が改善、怪我のリスクも軽減できます。
同じく、トレーニング後もしっかりとストレッチをしてください。
トレーニング後は、筋肉疲労、そして疲労物質が身体に蓄積し筋肉が緊張することで、張りも出てきます。
このため入念なストレッチで筋肉の緊張をほぐし、筋肉をOFFの状態に戻すことが大切。
後々の筋肉痛軽減や怪我の予防やパフォーマンス低下を防げますよ。
フォームローラーでセルフマッサージをしてさらなるパフォーマンス向上へ
フォームローラーを使用することでセルフマッサージが可能です。
通常のストレッチだけではほぐせない体のコリや張りをより効果的に解消できます。
背中や腰に使用すれば柔軟性もより向上するため、著者もBIG3トレーニング前と後には必ずフォームローラーを使用しています。
ベントオーバーロウイングでおすすめなトレーニングギア
トレーニングベルト
ベントオーバーロウイングでは腰に大きな負荷がかかるため、腰を保護してくれるトレーニングベルトは必須アイテムです!
パワーベルトは腰の保護だけでなく、腹圧を高めてくれるサポート力があるアイテム。
そのためベルトなしでの使用重量と比べ、より重い重量を扱えるというメリットもあります。
トレーニングベルトはベントオーバーロウイングだけでなくBIG3(デッドリフト・スクワット・ベンチプレス)種目においても必須!
全ての筋トレ種目は必ず腰に負荷がかかるので、ぜひとも用意していただきたいギアです。
パワーグリップ
パワーグリップは握力をサポートしてくれるギアです。
ベントオーバーロウイングでは、高重量になればなるほど素手のままでバーベルを握り持つことが困難になります。
前腕筋はベントオーバーロウイングの対象筋である背中の筋肉と比べると小さいため、その分出力も弱くなるからですね。
しかし、背中の筋肉は大きく出力も大きい部位。
高重量でないと追い込み切れない場合があるのですが、高重量のバーベルを素手で握り続けるには限界があります。
そのためパワーグリップを使用しましょう。
少ない握力でもしっかりと高重量のバーベルを握ぎり続けられますよ。
プル系種目(引っ張る種目)やロウイング種目(引く種目)全般に使用できるため、持っていて損はありません。
リストストラップ
リストストラップは主に革製の細長いベルトのような形をしているアイテムで、バーベルに巻き付けて使用します。
パワーグリップと同じ効果を持ちますが、リストストラップの方が耐久性が高く、超高重量でも耐えます。
その反面、バーベルにストラップを巻き付けなければいけないためセットアップに時間がかかること、慣れるまではうまく使えないという点がデメリットです。
パワーグリップは容易に使用できますが140kg以上では壊れる危険性があり、リストラップは200kgでも安全に使用できるがセットアップに時間がかかる上慣れが必要ですので、まずは試してみてください。
自分と相性の良いギアを選ぶことが大切です!
リフティングシューズ
通常の運動用シューズだとアウトソールに衝撃吸収材のクッションが使われているものが多く、高重量を扱うトレーニングでは使用できません。
ベントオーバーロウイングのように100kg以上の重量を扱う種目ではクッションが沈み込んでしまい、体幹が不安定になってしまったり、足首や膝に捻じれるように負荷が入ってしまったりするため、怪我の原因になってしまいます。
ウェイトトレーニングでは必ず底が薄く硬いシューズを履くか、裸足でトレーニングすることがおすすめです。※ジムでは裸足でのトレーニングを禁止されている店舗もあるため要注意。
また、デッドリフトやスクワットでは“踏圧”(足の指や足裏全体を使って地面を掴むこと)が体幹の安定や出力向上に影響するため、可能な限り素足に近い感覚のシューズを選ぶことをおすすめします。
まとめ
ベントオーバーロウイングは、男らしい逆三角形の背中を手に入れるためには欠かすことのできないトレーニング種目です。
正しく適切なフォームで動作すれば非常に高い効果が期待できますが、間違ったフォームで動くと腰を怪我してしまい、日常生活に支障をきたす可能性があります。
まずは軽い重量を使い、美しいフォームで動作できるよう練習してみましょう。
ボディメイクの一番の近道は、正しいフォームで筋トレをすることです。
そのことを常に念頭に置いて、ボディメイクをしていきましょう。
“No pain No gain”
他にもある! 背中を鍛える筋トレについてはこちら♪
AKI
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