「超回復」という言葉を聞いたことがありますか?
「名前は聞いたことあるがよくわかってない」「なんとなく知ってるけど、細かく理解しているわけではない」という人も多いのではないでしょうか。
「超回復」は筋トレで体作りをしていく上で絶対に欠かせない観点です。この記事では超回復の仕組みから普段の筋トレへの生かし方まで詳しく解説していきますので、超回復を正しく理解し効果的なトレーニングを目指していきましょう!
この記事の目次
筋肉の超回復とは?
超回復とは、一言で表すと
「筋肉が破壊されると、破壊される前の状態よりもさらに大きく・強い状態まで回復する」
というものです。「筋肉が破壊」と書くと何か恐ろしいことのように聞こえますが、実は日常的に筋肉は破壊と修復を繰り返しています。筋肉はある程度の負荷がかかると壊れるようにできており、普段から皆さんが感じる「筋肉痛」は壊れた筋肉が炎症を起こすことで感じるとされています。
人間の身体には自己修復機能がありますので、壊れた筋肉が元通り治るのはある意味当たり前なのですが、ポイントは壊れる前の状態よりもさらに筋肉が大きく成長する、というところです。
元に戻るだけならただの「回復」ですが、元の状態を“超えて回復”するので「超回復」と呼ばれるのです。
超回復のメカニズム
では超回復の仕組みやプロセスについて、さらに細かくみていきましょう。
超回復は身体が環境適応しようとした結果
実は超回復は生理学における人間のストレス反応の理論の中で出てくるもので、超回復という現象自体は筋肉に限らず人間の身体全体に見られます。例えば骨折した骨が治った際に前よりも骨が太くなる、ということが起きますが、これも超回復の一種です。
人間の身体は損傷(=ストレス)を受けると、それを回復しようとする自己修復に加え、ストレスを受けた環境に適応しようとします。わかりやすく言うと、「次に同じ負荷を受けても耐えられる身体になろう」という作用が働くということです。つまり超回復とは人間の身体が環境に適応しようとした結果だと言えます。
筋トレという行為は、この人間の環境適応能力を利用して意図的に筋肉を増やしています。重いダンベルを持ち上げる経験を筋肉にさせることで、身体に「この重りを持ち上げられるだけの筋肉が必要な環境なんだ」とある意味“勘違い”させ、筋肉を増やしているのです。
ここから得られる教訓は2つあります。
1つ目は、恐竜が環境の激変により絶滅したように、環境適応力には限界があるため過度な筋トレは逆効果だということです。トレーニングはあくまで人間の身体が適切に環境適応できる範囲内、平たく言えば「まあまあキツイ」くらいの強度でやる必要があり、過度な負荷をかけると怪我につながったり筋肉が思うように増えなかったりします。
2つ目の教訓は、身体はただ環境に適応しようとしているだけなので、当然、超回復の“逆”もあるということです。つまり、トレーニングを続けないと人間の身体は「筋肉が不要な環境なんだ」と思い、一度付いた筋肉も時間とともに無くなっていきます。従って、筋肉を増やすには筋トレが必要なのはもちろん、トレーニングで付けた筋肉を維持するにもトレーニングを継続していく必要があります。(これは経験上、感覚的にわかっている人がほとんどだと思いますが)
筋肉の超回復が起きるプロセス
次に筋肉の超回復が起きるまでのプロセスを確認しましょう。
筋トレをしてから時間とともに筋肉量がどのよう変化するかを表したグラフは以下のようになります。
このグラフを見てわかるように、筋トレをすると一度筋肉が破壊され筋肉量が減少する時期(グラフの①)があります。その後、減少した筋肉が回復する局面(グラフの②)を経て、筋肉が以前よりも増加する超回復期(グラフの③)が訪れます。一定量筋肉が増加すると超回復も終わりまたゆるやかに筋肉が減少していきます。(グラフの④)
この事から、最も効率的なトレーニングサイクルは③と④の変わり目で再び筋トレをするのが理想的だということがわかります。
超回復を意識しないオーバートレーニングの悲劇
では超回復を意識せず、十分な時間を置かないまますぐにトレーニングを繰り返した場合のグラフを見てみましょう。
この通り、筋肉が十分に回復する前に再び筋肉を破壊しているため、筋肉は増えるどころか減ってしまいます。ツラい思いをして一生懸命トレーニングした結果、筋肉が減ってしまうなんて悲劇以外の何物でもありません。このような事態を起こさないためにも、筋肉痛や強い疲労感が残っている状態でのトレーニングは避け、しっかりと休養を取るようにしましょう。
超回復のまとめ
この章では超回復の仕組みについて解説してきましたが、ここまでのポイントを3つにまとめておきます。
筋肉はトレーニング時に増加するわけではない
筋肉は筋トレ時にはむしろ破壊されており、その瞬間に筋肉が増えているわけではない、という点は絶対に押さえておきたいポイントです。筋トレ初心者のよくある勘違いとして、筋トレによるパンプアップ(筋トレにより発生した代謝物を薄めるために筋肉が水分を取り込む現象。俗に言う筋肉が「張っている」状態)を見て、「筋トレしたから筋肉が増えた!」と誤認してしまうことです。パンプアップは筋肉が膨張しているだけで筋肉量が増えているわけではないので注意しましょう。
筋トレ後は傷ついた筋肉を回復させるためにしっかりと休息を取って下さい!
強度や頻度は高ければ高い程良いわけではない
超回復というのは「辛い思いをした分、強くなる」と言えるので、まるで少年マンガの主人公のようですが、少年マンガと決定的に違うのは「辛い思いをすればするほど際限なく強くなれる訳ではない」という点です。
おそらくマンガであれば主人公が死にそうなほど窮地に陥った後は途方もなくパワーアップすることが多いと思いますが、残念ながら現実は違います。極度に負荷をかけたり、あまりに高い頻度で筋トレを行ってしまうと、体は強くなるどころかむしろ弱くなってしまいます。
「辛い思いをした分だけ見返りが欲しい」と思うのが人情ですが、オーバートレーニングは見返りがあるどころかむしろ「とても辛い思いをしたのに、マイナスしかない」という最悪の事態になるので、絶対に避けるようにしましょう!
破壊→修復→超回復の順で起きる
最後に押さえておきたいのは、超回復が起きるまでの過程です。超回復について表面的な知識しかないと、「筋トレをした後、すぐに超回復が始まってる」と勘違いしていまうことが多いです。
筋トレ(=筋肉の破壊)の直後に起きるのは「修復」であり、すぐに超回復が起きるわけではありません。筋肉が以前より多くなり始める、つまり超回復が起きるのは修復が終わった後であるため、修復が終わり超回復の効果がしっかりと現れるまで筋肉に十分な休息をとらせることが非常に重要なのです。
超回復を最大限引き出す筋トレ3つのポイント
ここまでで超回復のメカニズムについて解説してきましたが、次に「どんな筋トレが超回復を最大限引き出せるのか?」を説明していきます。
筋トレの強度の調整
まず最初のポイントは、トレーニング強度の調整です。前半でも繰り返し触れた通り、過度の負荷は筋肉にとってマイナスとなってしまいますが、かといって負荷が小さすぎても効果がありません。
この強度の調整というのは筋トレの永遠のテーマと言えるほど難しく、だからこそパーソナルトレーナーのような職業が成り立つのですが、ここでは筋トレ初心者でも1人で簡単に行えるトレーニング強度調整方法をご紹介します!
その方法とは
「筋トレをした次の日の朝、筋トレをした部位を軽く動かしてみてコンディションを確認する」
というものです。そして筋肉の部位ごとに、動かしてみた感触をみてざっくり下記のようなカテゴリに分類します。
- 特に疲労感もなく、なんの違和感もなくいつも通り動かせる
- 筋肉痛はないが、動かすと疲労感を感じる
- 少し筋肉痛を感じるが、普段の動作に影響はない
- かなり筋肉痛を感じるため、普段の動作に影響がある
- 非常に強い痛みがあり、まともに動かすことができない
1は明らかに強度不足で、5は明らかにオーバートレーニングです。強度としては3〜4ぐらいがちょうどよく、しっかりと休息を取ることで超回復による効果的な筋肉増加が望めます。2は少し強度不足ですが、腹筋のように比較的筋肉痛になりにくい部位であれば強度が適切でも2の状態になることもあるので、そのような部位はトレーニング頻度を高めることでカバーするようにしましょう。
このように、筋トレの次の日に必ず状態をチェックする習慣をつければ、自然と自分にとって最適な強度を把握できるようになるはずです。ここで最も大事なのは「自分の身体を自分で知る」という点です。人間の身体は個人差があるため、一般的にベストなメニューがあなたにとってベストとは限りません。しっかり自分の身体を観察し、自分にとって最適な強度を知るようにしましょう!
効果的な休養の取り方
次のポイントは、「休養」です。
前述したように、超回復のためには休養が必要ですが、ただなんとなく休むだけでは超回復の効果を最大限引き出すことはできません。教養を取る上でおススメの手法やポイントをいくつかご紹介します!
アイシング
筋トレ直後に氷嚢やスプレーなどを使ってアイシングを行うと、筋トレ後の疲労回復が早まる効果があります。特にハードなトレーニングをした後などは、筋肉や関節が熱を持って怪我をしやすい状態となっているため、しっかりアイシングを行ってアフターケアをするようにしましょう。
タンパク質を中心としたバランス良い栄養補給
いくら超回復で身体が筋肉を作ろうとしてもその材料となる栄養素がなければ作りようがありませんから、必要な栄養素を補給しておくことは非常に重要です。
筋肉の材料となるタンパク質が何より重要なのは言うまでもありませんが、タンパク質以外の要素もバランスよく摂る事が大事なので注意が必要です。何かと悪者にされがちな炭水化物や糖質はトレーニングで消耗したエネルギーの回復に必要ですし、トレーニングにより疲労している身体は免疫力も低下するため、病気などにならないようビタミン類もしっかり摂る必要があります。
よく「筋トレしたらプロテイン飲んでおけばOK!」と思っている人がいますが、プロテインはあくまで食事だけだと不足してしまう部分の補助として飲むものであり、栄養補給の基本は普段の食事だという点はしっかり押さえておきたいところです。
アクティブレスト
次に「アクティブレスト(積極的休養)」という考え方をご紹介します。これは簡単に言うと
「何もせずじっと休んでいるよりも、少し身体を動かした方が休養の効果が高い」
というものです。休息日にストレッチやウォーキング・ジョギングなど、軽く身体が暖まる程度の運動をすることで、身体の血行が良くなり、より早く疲労を回復することができます。もちろん、あくまで目的は休養なので、本当に軽めの運動でよく、散歩するぐらいの気持ちでリラックスしてやるといいでしょう。
初めてアクティブレストを聞いた方は「身体を動かした方がより休めるなんてことあるの?」と感じるかもしれませんが、実際にやってみると効果が実感できると思いますので、騙されたと思って是非一度やってみてください。(筆者も大学生の頃、所属していた体育会系運動部で「明日は部活オフだから。でもアクティブレストだから○時にグラウンド集合ね」と言われ、驚愕した覚えがあります笑)
そして睡眠
最後に、やはり休養で最も重要な点である「睡眠」について触れておきます。
トレーニングで疲れた身体を休める上で十分な睡眠時間が必要なのは言うまでもありませんが、気をつけたいポイントを2つあげておきます。
1つ目は、寝る前にストレッチをしておくことです。筋肉の回復においては疲労した部位の血流を良くすることが重要なので、寝る前にストレッチをすることで寝ている間の回復効果を最大限引き出すことができます。また、ストレッチは精神的なリラックス効果もありますので、気持ち的にもぐっすり眠れるようになります。
2つ目は、22時〜2時の時間帯は必ず睡眠状態でいる、ということです。この時間帯は人間が最も成長ホルモンを分泌する時間帯だと言われており、筋肉の成長の観点でもこの時間帯に寝ていることが効果的です。
上記2つのポイントをしっかりおさえて、超回復にとってベストな睡眠が取れるように心がけましょう!
トレーニングスケジュール
超回復の効果を最大限引き出すポイントとして最後にご紹介するのが、トレーニングスケジュールです。
超回復完了の見極め
これまで触れたように、トレーニングを再開する理想のタイミングは「超回復が完了したとき」なので、トレーニングスケジュールを立てる上で「いつ超回復が終わるか」を考慮することが重要です。
では超回復はいつ終わるのでしょうか。一般的には超回復はトレーニング後24〜48時間で終わるとされています。つまり大雑把に言うと「筋トレした日の翌日と翌々日は休息日とすればOK」ということになります。
ただ、あくまで上記時間は大体の目安であり、筋トレした部位や強度、その時の体調などで変動しますし、個人差もあります。より綿密なスケジュールを立てたい人のために、ポイントを2つご紹介します。
1つ目は、部位によって休息時間を変えることです。腹筋などの小さい筋肉であれば休息は短めで問題ないので、そうした部位については休息日を1日ないし0日(つまり連日トレーニングする)としていいです。逆に下半身系の大きな筋肉はしっかり2日間休息日を取るようにしましょう。
2つ目のポイントは、トレーニング後の筋肉の状況を見て、柔軟にスケジュールを変更することです。その際に分かりやすい指標となるのが筋肉痛で、筋肉痛が残っている場合は超回復が完了していないと考え、たとえトレーニングを予定していてもその部位はやめるようにしましょう。
部位別トレーニング
このように筋トレ後は基本的に24〜48時間の休息が必要ですが、そのペースでは満足できない(もっとたくさん鍛えたい!)という人もいると思います。そういった人にオススメなのが「部位別トレーニング」という考え方です。
超回復に必要な休息期間はあくまで筋肉の部位別に考えればよいため、筋トレ後の休息期間がまだ終わっていなくても、まだ筋トレしていない部位を筋トレすることで効率的にトレーニングしていくのが、「部位別トレーニング」です。
「部位別」と聞くと筋肉に詳しくない人はハードルが高く感じるかもしれませんが、例えば「上半身」「下半身」とざっくり分けるだけでも大丈夫です。最もシンプルな部位別トレーニングは、1日目に上半身の筋トレ・2日目に下半身の筋トレ・3日目は休息日、という3日のサイクルを繰り返していく感じになります。
上述した通り超回復に必要な期間は筋肉の部位によって変わってくるので、細かく計画を練るのが好きな人は、筋肉の種類ごとに超回復の期間を考慮した部位別トレーニングスケジュールを立ててみて下さい!
終わりに
この記事では超回復の仕組みから活用の仕方まで細かく解説してきましたが、「なんとなく知っているようで、実はよく分かっていなかった」という方も多いのではないでしょうか。
身体作りをしていく上で欠かせない考え方である「超回復」、ぜひこの記事で学んだことを今後のトレーニングライフに生かしていって頂ければと思います!
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MASA
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