ハイクリーンとは、全身性のトレーニング種目のこと。
重量挙げ競技として知られる「ウェイトリフティング競技」の選手が、日々の練習で取り組んでいるものですね。
ハイクリーンはボディメイクとして非常に効果的な種目であり、さまざまな面においても高い効果が期待できる種目です。
特徴は、全身の筋肉を関与させて動くため、全身を効率よく鍛えられること。
また、各種スポーツ競技などにおいて「より実用的な筋力作り」に最適な種目でもあります。
たとえばバーベルを挙上するさいの動きで、全身の連動性を高めるのに効果を発揮しますよ。
今回は、そんなハイクリーンの基本的なやり方・筋トレ効果・効果的に取り組むためのコツなどについて解説します!
この記事の目次
ハイクリーン(パワークリーン)の基礎知識
ハイクリーン(またはパワークリーン ※以降ハイクリーンと明記)は、ウェイトリフティング競技の試技「クリーン&ジャーク」の動作として取り組むトレーニング種目です。
ウェイトリフティング選手だけでなく、各種スポーツ競技のアスリートの間でも取り組まれています。
その目的は、筋力増強と全身の連動性の向上です。
ハイクリーンの動作に関与する関節は、手・肩・肘・股・膝・脚。
つまりほぼ全身の関節が関わるため、各関節に関係する筋肉群を同時に鍛えられるのですね。
- 下腿三頭筋
- 大腿四頭筋
- 殿筋群
- ハムストリング
- 脊柱起立筋
- 僧帽筋
- 三角筋
- 前腕筋群
- 上腕三頭筋
- 腹筋
ぜひハイクリーンに取り組むことで、全身を効率よく鍛えていきましょう。
ハイクリーンは実用的な肉体作りに最適!
ハイクリーンを適切に行うには、動きを瞬発的にせねばなりません。
瞬発的に動くことで、全身の瞬発力が向上できます。
またハイクリーンは複雑な動作でバーベルを動かします。
そのため、常にバランスを保ちながら全身の筋肉をうまく連動させなくてはなりません。
大きな力を生み出すためですね。
つまりハイクリーンの動作を適切かつ美しくできれば、全身の連動性の向上が可能。
結果的に各種スポーツ競技におけるパフォーマンスの向上も期待できます。
ハイクリーンの難易度は高い?
ハイクリーンは、筋トレ中級者以上向けのトレーニング種目です。
全身を複雑な動作によって動かさなければならず、さらにウェイト(バーベル)を保持したままなので、相応の筋力と練習量、技術が必要になります。
筋トレ初心者の方がいきなりこの種目に取り組むのは、おすすめしません。
まずは筋トレ種目の中で基本となるBIG3(ベンチプレス・スクワット・デッドリフト)に取り組みましょう。
そして、最低限の筋力を身に着けてからでないと、怪我をしてしまいます。
ハイクリーンのやり方
瞬発的な動作で行うため、見ただけではその複雑な動作に気付きづらいかもしれません。
しかし、実際には非常に複雑な動作が組み合わさったトレーニングです。
ここでは詳細なやり方を紹介していくため、一連の動作をいくつかのフェーズに分類していきますね。
フェーズ①セットアップの作り方
実際にハイクリーンの動作に入る前に一番重要なのが、初めのポジション作り・セットアップです。
このセットアップがうまく作れていないと、その後のハイクリーン動作で間違った動きになってしまいます。
しっかりと適切にポジション作りを行いましょう。
【フェーズ①のやり方】
- 適切な重量のバーベルを床に置き、バーの前で直立する
- 両足は肩幅程度か、少し広めに開く
- つま先は外側に開く
- バーを足の甲の中央部あたりにくるように調整する
- 膝と股関節を曲げて腰を下ろし、上半身を軽く前傾させる
- バーベルを肩幅よりも広めの手幅で握る
- 背筋を伸ばして胸を軽く張る
- 顔は正面を向く
フェーズ②ファーストプル(引き上げる動作)
セットアップ・ポジション作りが完成した後は、実際に最初の動作を行っていきます。
バーベルを床から浮かして股関節辺りまで引き上げるまでの動作を、「ファーストプル」と呼びます。
【フェーズ②のやり方】
- バーを持つ両肘は伸ばしたまま固定し、肘の内側同士が向き合うようにする
- 股関節から膝関節の順番でバーベルと共に腰を上げていく
- バーベルはスネをこするような近い位置で引き上げていく
- 背筋は常に伸ばしたまま
- バーベルが膝を通過した辺りで腰を前に突き出すようにする
フェーズ③セカンドプル(引き上げる動作)
バーベルを太ももの中央あたりまで引き上げたら、その後さらに上まで引き上げる動作が「セカンドプル」です。
「ジャンプ動作」と「シュラッグ動作」を瞬発的な動作で行い、バーベルを上半身まで引き上げていきます。
【フェーズ③のやり方】
- バーベルを太ももの中央部あたりまで引き上げたら、膝関節と股関節を瞬発的に伸ばす
- 同時に腰を前に突き出し、ジャンプするように両足を床から浮かせる
- ジャンプ動作によって上がってきたバーベルに、シュラッグ動作(肩をすくめる動作)を加え、さらに引き上げる
- バーベルが胸のあたりまで上がってきたら、両肘を外側に曲げる
フェーズ④キャッチ
最後のフェーズでは、引き上げてきたバーベルを、肩の上部でキャッチします。
このキャッチ動作もある程度のテクニックが必要です。
そのため、ここでしっかりとそのやり方を確認し、適切な動作で取り組んでいきましょう。
【フェーズ④のやり方】
- バーベルを高く引き上げると同時に両膝を軽く曲げ、バーの下に潜り込むようにする
- バーベルを持ちながら両肘を前方に突き出すようにし、バーベルを肩の前でキャッチする
- このときバーベルを保持する手首は反り返り、手のひらが上を向いた状態
- 肩の前部あたりでバーベルを固定する
- 曲げていた両膝を伸ばし、直立した姿勢になる
ハイクリーンのバリエーション種目5選!
では、ハイクリーンのバリエーション種目について解説します。
ハイクリーンのバリエーション①クリーン&プレス
クリーン&プレスは、ハイクリーン動作と「ミリタリープレス」動作を組み合わせて行うバリエーション。
ハイクリーン動作の後、ミリタリープレス動作でバーベルを頭上高く挙上することで、肩の筋肉・三角筋を強烈に鍛えます。
さらにミリタリープレスは直立した姿勢のままで重量のあるバーベルを挙上するため、体がバランスをとろうとします。
そのことにより体幹もしっかり鍛えられますよ。
【やり方】
- ハイクリーン動作を行う
- 肩の前面に位置するバーべルを、頭上高く挙上していく
- 背筋は伸ばしたままで三角筋の力を使う
- カラダがブレないよう、お腹に力を入れて体幹を引き締める
ハイクリーンのバリエーション②ダンベル・ハイクリーン
ダンベル・ハイクリーンは、通常「バーベル」を利用して行うハイクリーンを「ダンベル」で行うバリエーション。
バーべルよりも重量が軽くなり、可動域をより広くして取り組めることが最大の特徴です。
またダンベルは左右それぞれのウェイトが独立しているため、筋力の左右差を少なくできます。
【やり方】
- ダンベルを両手にもち、ハイクリーンを行う
- ダンベルを保持する手首の角度は「ニュートラルグリップ(手のひら同士が向き合う角度)」で保持する
ハイクリーンのバリエーション③ワンハンド・ダンベル・ハイクリーン
この種目は「ダンベル・ハイクリーン」の片手バージョン。
片手でダンベルを持つことでアンバランスな状態を作り出し、より強烈に体幹を鍛えることが特徴です。
体のバランス力向上や体幹力向上が目的の場合、最適なバリエーションでしょう。
注意点は両方の腕で同じ回数・セット数に取り組むこと。
片側だけだと全身の左右の筋力に差が出てしまったり、バランス力に偏りが生じてしまいます。
【やり方】
- 片手にダンベル1つを「ニュートラルグリップ」で持つ
- フェーズ2では、両足の間にダンベルを持つ片手をおろして行う
- 体が左右にブレやすくなるため、しっかりとお腹に力をいれて体幹を引き締めておく
ハイクリーンのバリエーション④ケトルべル・ハイクリーン
ケトルベル・ハイクリーンは、ケトルベルを利用して行うバリエーション種目です。
ダンベルは握る位置にウェイトの重心があるのに対し、ケトルベルは、握る位置からウェイトの重心が離れています。
そのため、より強く筋肉に負荷をかけられるという特徴があります。
また、ケトルベルトレーニングには「関節の自然な動きのまま動作できる」という特徴も。
ケトルベル独特な形状をしているため、手首や肘関節は自然な動きをします。
結果としてより実用的で安全にトレーニングが可能です。
【やり方】
- ニュートラルグリップでケトルベルを保持し、ハイクリーン動作を行う
- 肩の上部でキャッチをする際、手首を反って重さが手の甲に乗るようにする
- ケトルベルをおろして再度同様に行うときは、下ろしながらニュートラルグリップに戻す
ハイクリーンのバリエーション⑤クリーン&ジャーク
ウェイトリフティング競技の正式な種目、「クリーン&ジャーク」です。
ハイクリーンの動作の後にジャーク動作を行い、バーベルを頭上高く挙上していきます。
クリーン&プレスでは軽い重量でしか取り組めませんが、「クリーン&ジャーク」は高重量のバーベルでトレーニング可能です。
頭上にバーベルを挙上する前に膝を軽く曲げて伸ばし、バーを上方へ押すパワーを追加しながら両腕を伸ばすからですね。
【やり方】
- ハイクリーン動作を行う
- バーベルを肩の前面にキャッチしている状態から、膝を軽く曲げていく
- 膝を曲げたら勢いよく膝を伸ばすと同時に、両肘も伸ばしていく
- バーベルの重量を受け止める際は膝を軽くまげ、バーベルを受け止める
- バーベルの重量を頭上高い位置で受け止めた後、膝を伸ばして直立する
ハイクリーンを効果的に行うためのコツ2選!
では、ハイクリーンの動作をより効果的に行うためのコツについて解説します。
- フェーズ3(セカンドプル)を爆発的に行う
- 可能な限り体の近くでバーベルを動かす
ハイクリーンの効果的なコツ①フェーズ3(セカンドプル)を爆発的に行う
ハイクリーンを効果的に取り組むためには、フェーズ3(セカンドプル)がどれだけ爆発的にできるかがポイントです。
フェーズ3の動作である膝関節と股関節の伸ばしをパッと素早く行うことで、バーベルに上方向へのパワーを伝えられます。
もしフェーズ3の動作で「爆発的挙上」が足りない場合、バーベルが胸まで上がってこないためキャッチできません。
つまり、ハイクリーンは失敗です。
フェーズ3の「膝関節伸展・股関節伸展」を強く動作し、腰を前方に思い切り突き出すように意識して取り組んでいきましょう。
ハイクリーンの効果的なコツ②可能な限り体の近くでバーベルを動かす
ハイクリーンの一連の動作では、常に「体に沿うようにバーベルを動かす」ことも重要なコツです。
理由は、体から離れるとバーベルを挙上するパワーが逃げてしまうから。
また、腰への負担も大きくなり痛める原因になりかねません。
フェーズ2では、スネ→膝→太ももに沿うように動作し、フェーズ3では股関節前面に触れるように動かしてください。
ハイクリーンはさまざまなスポーツ競技でのパフォーマンス向上に効果的!
ハイクリーンを適切なやり方で取り組めば、全身の筋肉を強化できます。
さらに多くの関節を連携させるので、全身の連動性の向上も期待可能です。
各種スポーツ競技などにおいてパフォーマンスが向上し、良い結果を残せるようになるでしょう。
ハイクリーンで鍛えられるのは「瞬発力・筋力・ジャンプ力・バランス力・体幹力」など。
身体機能の全体的な底上げ効果が期待できます。
陸上競技・球技・格闘技・重量挙げなど、さまざまな分野で活用できますね。
ハイクリーンは筋トレ種目のパフォーマンス向上にも期待できる!
筋トレ種目では、体幹力が非常に重要。
筋トレ種目は大きく分けて「コンパウンド種目(多関節運動種目)」と「アイソレーション種目(単関節運動種目)」の2つに分類されます。
コンパウンド種目を代表する筋トレ種目と言えば「BIG3(ベンチプレス・スクワット・デッドリフト)」。
これらの種目も体幹力が必要です。
また、ハイクリーンは体幹周辺の筋力にも強く関与するため、体幹をしっかり鍛えられます。
ハイクリーンに取り組み続けることで、強い体幹が手に入るでしょう。
そのため、筋トレ種目全般のパフォーマンス向上が期待可能なのです。
ハイクリーンに取り組む上での注意点
ハイクリーンは難易度の高いトレーニング種目。
正しいフォームで取り組まなければ、事故につながる恐れがあります。
フォームを覚えるまでは、スポーツトレーナーの元で適切なやり方を教えてもらうのが一番です。
もし自分ひとりで取り組む場合は、最初はバーベルにウェイトをつけず、バーだけで練習することをおすすめします。
さらに、ハイクリーンでバーが高い位置にあるときにバランスを崩すと、他のトレーニーに怪我をさせてしまう場合があります。
ハイクリーンに取り組むさいは、周りに人がいないか確認して行うってくださいね。
ハイクリーンで利用したいトレーニングアイテム2つ!
最後にトレーニングギアを紹介します。
ハイクリーンでぜひ利用してほしいのは、次の3つのアイテムです。
- トレーニングベルト
- リストラップ
ハイクリーンで用意したいアイテム①トレーニングベルト
トレーニングベルトとは、トレーニングで特定の部位を保護する大きなベルトのこと。
腰を保護しながらより高い筋出力を発揮してくれるための、トレーニングギアです。
トレーニングベルトをお腹に巻くことで「腹圧」が高まり腰の怪我をしにくくなります。
また腹圧が高まることにより筋出力も向上するため、より重い重量を扱うことが可能です。
ウェイトリフティング種目では、腰への負担が大きくなります。
高重量トレーニングを行いたい方や、腰が弱い方、腰に不安を抱える方は、トレーニングベルトを有効活用していきましょう。
【関連記事】トレーニングベルトについてさらに詳しくはこちら♪
ハイクリーンで利用したいアイテム②リストラップ
リストラップとは、手首に巻き付けることで関節を保護してくれるトレーニングギアの一つ。
リストラップは「プレス系種目」や「プッシュ系種目」などの「押す動作」があるトレーニングで効果を発揮します。
手首全体を囲うようにラップを巻き付けることで、手首の可動域をあえて制限し、手首が伸びすぎないように固定。
その結果、高重量のウェイトを扱うさいでも必要以上に手首が反るのを防ぎ、手首のブレを抑制します。
ウェイトを挙上するための力をダイレクトにウェイトに伝えられるため、手首の怪我のリスクを回避可能です。
リストラップについてより詳細な内容を知りたい方は、下にある記事も合わせて確認しましょう!
まとめ
今回は、全身を効率的にかつ実用的な筋力を鍛えることができる「ハイクリーン」について、解説をしました。
ハイクリーンは数ある筋トレ種目の中でも、難易度が高い種目。
しかし適切なやり方さえ習得すれば、非常に効果の高いトレーニングです。
ハイクリーンに取り組み、よりかっこ良くより実用的な体作りをしていきましょう。
“No pain No gain”
【関連記事】他にもあるバルクアップに効果的な筋トレ情報についてはこちら♪
AKI
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